- 夜に市内に出かける用事があった。目の前の広い交差点をぼんやりした灯りの路面電車が轟音を立てて横切って行く。黒い鉄路を横切って大きく右に曲がって、背の高い路面電車と並走して走った。真っ赤な行き先表示板と黄緑のボディ。今日も打ち合わせでだけ口を開く悲しい一日だが寂しくない。
- 昔の職場に電話すると、その先輩はやっぱりまだそこにいてほっとした。十六年前と全く同じ声としゃべり方だったのでびっくりした。ともかくメールアドレスを手に入れたが、来週はアルゲリッチを聴きに九州に行くので擦れ違いだ、とのこと。
- その一時間前に某係の長に提出書類のあれこれを質問しにいくと彼は嬉しそうな顔をしていた。つまらない事を聞くのも嫌だし言うのも嫌だ、という傲慢な自分にいつも気づいているのだが治せない。彼は自分と同じスピードで歳をとっている。自分はつまらない事をもっと口から出すべきかと思う。
- 夜の楠の街路や明るい鉄路の上を時間が轟音を立てて流れ去っているのが見える。時間は黄色っぽい目をして笛を吹きながら飛んでいる。急いで書いたり喋ったりしないと、全てを失う日はあっという間に来る気がする。自分が黙っていたら目の前のその人が砂粒のように消えてしまう。
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